5月末の提出に間に合わせようと、決算書の点検をするため早朝パソコンに向かう。
同居人も,何を勘違いしたのか珍しく起きだしてきた。
今はhitoの格好をしているが、寝ぼけているらしく、尻尾だけはしまい忘れたようである。
なにやら話しかけたい様子がうかがえる。
経験則からこのような場合話を聞くと、ろくなことにならない。
機先を制して
「これから大事な仕事があるので1時間は話しかけないように」
と厳重にかつ厳かに言い渡した。
「判りました、でもちょっとだけ聞いて頂戴」
こちらの返事を待ちもせずまくし立てる。
どうでもいい出来事から始まり、今日の予定、昨日食べたもの、クリーニング屋の兄ちゃんの話、プールの水が冷たかったこと、又餃子をもらってきたこと、エレベーターの中で大きな犬に出会ったこと、中国の大地震、芸能人のスキャンダル、冷蔵庫で野菜を干からびさせた自分勝手な言い訳・・・etc.
永年の修行のおかげで、聞き流す術を会得してはいるが、生返事をすると機嫌が悪くなる。
まじめに聞いているような振りをしていたが、これにも限度がある。
散々まくし立てたあと、こちらがあまり乗り気でないことを感じたのか、一人サイレンを唸り
一人その場ドタバタを数回して、すっきりした顔で尻尾を立てながら、部屋を出ていった。
この間約15分ほど。
取り残された私は、魂を抜かれた木偶人形(でくにんぎょう)になってしまった。
さぁこれから張り切って、お仕事をしようと思っていた矢先の出来事である。
しばらく仕事が手につかなかった事は言うまでもない。